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新・立命館大学戦史研究所

立命館大学の登録団体である立命館大学戦史研究所の公式ブログ。戦史研の活動再開とともに復活!

 

【鑑賞】戦場でワルツを 

『戦場でワルツを』(2008)を鑑賞

 5月27日の活動で『戦場でワルツ』を鑑賞。非常に有名な映画で話題になっていた記憶があるが、まだ観ていなかった。イスラエルの監督の自伝的なドキュメンタリーで、舞台がレバノン内戦であるということは知っていたが、実際に観てみるまでは、なぜアニメーションなのかという点もピンと来なかった。実際に観てみると、非常によくできているの一言。なるほど、というべきか。

 自分の中にある心象風景をもとに、同じ戦場を経験した部隊の仲間を訪ね、戦場の記憶を徐々に辿っていくというストーリー。前提知識なくこの映画をみると、①彼はなぜベイルートにいるのか。②何が起こったのか(主人公の失った記憶とは?)という命題を考えながら話を追う事になるが、そのへん、ストーリー構成が非常に良く出来ているのでよかった。「なんだ、なんだ?」という感じで、そうした視聴者の思考を追う形で話が展開して行くあたり、例えて言うなら芥川の『藪の中』に近い。『藪の中』は、「真相はなんだ」というのが読み手の中核にあるけれど、この映画は、「リアリティとは何か」というのを考えさせられる。その点でも、非常にうまい。

 まず、主人公がPTSDの症状を抱えていることを、女医が彼に戦場のカメラマンの例を話しながら説明する場面がある。そのカメラマンは旅行者として戦場にいた。カメラを通してみるフィクションのように戦場を眺め続ける彼は、まるでアクション映画をみているように「すごい!すごい!」と興奮していたんだけど、あるときカメラが撃たれる。自己防衛として存在したレンズを失った彼は、現実に素手で触れてしまった。それからおかしくなってしまったという話。その話のあと、女医の質問に主人公は「休暇の記憶は鮮明なんだ」と答える。

 舞台は戦場。それなのに、時折流れる陽気な音楽。遠足気分の兵隊。で、その瞬間、一発の弾丸で世界が変わる。そんな描写が冒頭にある。(このへんの雰囲気はシュタゲに似てる)女医の話のところで、ああ、我々がみているのは主人公の自己防衛としての映像で、時々起こるシュタゲ的な風景描写は、その自己防衛からこぼれ落ちた現実の断片なんだなと気付くわけだけど、それもどこか〝リアリティー〟がない。

 リアリティーがないとはどういうことか。例えば、物語の後半。西ベイルートへ抜ける広い幹線道路での戦闘シーン。その様子を周りの建物から見物している住民。戦場のリアリティーの中にいる兵士とその様子を外から見ている周囲の住人(観客)という不思議さ。その場にいた記者も「不思議な光景だった」と回想する場面だが、その刹那、ショパンの曲に合わせて狂ったように銃を乱射し始める主人公の上官シュミュエル・フレンケル。(どうやら、「バシール暗殺の復讐劇だ」と叫んで、ショパンに合わせて機関銃乱射しながら気の狂れたワルツを踊るこのシーンが映画タイトルの由来らしい。)このへんの不思議さがなんとも。

 さらにうまいのは、話が終盤に差し掛かって、サブラー・シャティーラの虐殺になると、今度は、虐殺を主人公のイスラエル人が外からみているという図式に変わる。さっきの気の狂れたワルツの幹線道路の戦闘とは逆転して、虐殺の現実はパレスティナ人のリアリティー。それを何のことか分からず戸惑いながらみている主人公たち。アングルがぐるっと変わるわけね。でも、本人たちもなにがなんだか分かっていないという点では、さっきと同じ。なんだか不思議な感じで図式が変わる。そこにあるのは永遠と続く弱者の列。―これがアウシュヴィッツの記憶と重なって主人公の記憶を欠落させたんだ云々というのは、まあ、ともかくとして―その虐殺は、イスラエル軍幹部の「ストップ・シューティング。」の一言で終了するという。「GO HOME!」の一言で列は消えて、虐殺の結果だけが残る。これで終われば、「リアリティーとは何か」という命題を感想としてなんとなく漠然と終わったんだろうけど、ラストだけ「実写」というのがよかった。ただ不思議な感じで終わるんじゃない。「あ、そうだ。現実だったんだ。」と気づかされてそのままプツンと終わる。そんな映画でした。


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Category: かつどう!

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